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修平の視察報告

岡山県真庭市の「バイオマスタウン構想」を行政調査

平成28年8月29日(月)

-環境農林水産常任委員会視察-

●「真庭市バイオマスタウン構想」とは

温室効果ガス排出量の削減が世界的に提唱される中、わが国では、バイオマスエネルギー(※)の発生から利用までの総合的な利活用システムの構築に向け、平成14年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が議決定されました。それを受け、いち早く「バイオマスタウン構想」を掲げ、木材による循環型社会モデルを形成すべく、ベストセラー「里山資本主義」の舞台にもなった真庭市の行政調査を行いました。

真庭市では平成5年に地元の若手経営者や各方面のリーダーたちが中心となり、「21世紀の真庭塾」という組織が立ち上がり、そこに行政や産・学連携の仕組みが「協働」の形で参画し、循環型地域社会の構築に向けた体制が整備されてきた歴史があります。
そして、平成17年に9町村の合併を経て、総面積約が828kと広がり、そのうち約79%が森林という豊富な森林資源を活かし、翌年、木質副産物だけでなく、家畜排泄物や食品廃棄物などもバイオマスとして活用するため、明確な目標値を定め、その達成に向けた様々な方策を取りまとめた構想を策定ました。

具体的には木くずから木質エネルギーへの転換をはじめ、廃食油からBDF(バイオディーゼル)燃料の精製、バイオマス堆肥を利用した農作物栽培など、様々な取り組みが推進されています。
また、高校生によるバイオマス授業やバイオマス市民講座など、普及啓発活動も盛んに行われています。

●木質バイオマスの燃料活用と循環ビジョン

真庭市では「木質バイオマスエネルギー自給率」の目標値を20%に定め、木質資源を真庭市内で循環させる取り組みが行われていますが、その際、コストと手段、技術が大きな課題となります。そこで、実証実験を重ね、安定供給体制の構築をめざし、平成21年に「真庭バイオマス集積基地」を完成しました。

この施設では製品として利用できない曲がった木などの木質副産物を用途別に加工しています。例えば、かんな屑は新素材へ再利用し、粉砕した樹皮はバイオマス発電に、チップは熱利用や冷暖房対応ボイラーに、そしてペレットは農業用加熱ボイラーに活用するなど、産業、農業、市民生活などの様々な分野で有効活用されています。
こうした取り組みにより、真庭市のバイオマス利用量は年間約43,000tで5億円の地産効果を生み出し、また、石油代替量は年間約16,000klにも上り、14億円分を代替えするなどの経済効果をもたらしています。

また、真庭市役所本庁舎にはチップボイラーやペレットボイラーが設置された「エネルギー棟(建設費は約2億2千万円)」があり、石油などの化石燃料を一切使用せずに、真庭産のチップやペレットを利用することで、4階建ての庁舎内の空調の熱源を確保しています。まさにバイオマスタウンを象徴する“地産地消”の空調方式と言えます。さらに、庁舎内の電力の15%は太陽光エネルギーにより賄われています。

●銘建工業(株)と真庭バイオマス発電(株)

大正12年に創業した銘建工業(株)は、これまで真庭市を拠点に国内トップクラスの集成材メーカーとして事業を展開してきました。昭和40年頃には6千人いた岡山県内の製材産業従事者は5百人程度に減少し、衰退産業となった製材産業を復活させるべく、昭和59年に自社の廃材を利用したバイオマス発電を開始しました。当初は175kWの小さな発電所からスタートしましたが、平成9年には1,950kWの発電所に更新し、売電事業を始めました。
また、集成材事業で排出される4万トンの木くずは、発電事業だけでは使いきれず、平成16年から木質ペレットの製造販売も手掛け、日本のペレット生産では、トップシェアを誇っています。文字どおり、銘建工業は木質バイオマスのパイオニアとも言える企業です。

そして、平成25年にはその銘建工業を中心に、真庭市や真庭森林組合など官民9団体で「真庭バイオマス発電(株)」が設立され、平成27年から発電所が稼動しました。
燃料は真庭地域の間伐材をはじめとする未利用材や、製材所で発生する製材端材など、年間148,000tを使用します。
これにより発電出力は10,000kWにもおよび、一般家庭の約2万2千世帯分に相当します。1年間の売電価格は約22億円で、現在も順調に事業が行われています。
こうした取り組みにより、地域の林業・木材産業の拡大はもとより、雇用の拡大、森林機能の回復、観光振興など、様々な分野の活性化が着実に行われています。
さらに、平成22年には産・官・学の連携のもと、研究開発の拠点「真庭バイオマスラボ」が開設され、新素材開発に向けた事業が始まっています。

(※)バイオマスエネルギー

木材(木くず)や海草、生ゴミ、糞尿、プランクトンなど、再生可能な生物由来の動植物資源を利用した自然エネルギーのこと。近年、地球温暖化防止や循環型社会の形成に向け、石油などの化石燃料に代わる新たなエネルギー源として期待されています。

▲木質化された真庭市役所

▲地元木材を活用して建設された真庭市役所

▲木質化された真庭市議会議場

▲木質化された真庭市議会議場

▲市役所内エネルギー棟のpレットボイラー

▲市役所内のエネルギー棟のペレットボイラー

▲銘建工業内のバイオマス発電システム

▲銘建工業(株)のバイオマス発電プラント

▲銘建工業内の木くずの集積場

▲銘建工業(株)の木くず集積場

▲真庭バイオマス発電(株)の発電プラント

▲真庭バイオマス発電(株)の発電プラント