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修平の視察報告

カンボジアでの日系企業の投資環境調査

平成26年5月7日(水)~9日(金)

-個人視察- 

●目的

カンボジアと言えば、世界遺産のアンコールワットが大変有名ですが、紛争の名残りから、地雷や貧困に苦しむイメージのある国です。
1970年代にはポル・ポト政権下による独裁が続き、200万人以上とも言われる自国民が虐殺されるという悲劇は、今もなお記憶に新しいところです。
ポル・ポト政権崩壊以降も内戦が続き、その後も経済は低迷しましたが、1999年にASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟し、現在は急速な経済発展を続けています。

人口は約1,500万人で、国土面積は約18万k(日本の約半分)です。
カンボジアにおける経済政策は、経済特区の整備やサービス産業の外資100%の会社設立が可能であることなど、外国投資を積極的に受け入れています。
近年、中国国内の人件費の上昇を受け、より安い人件費を求めて、新たなビジネスモデルの確立を目指す企業が増えており、日本企業の進出も目立ち始めています。
滞在中は政策担当副大臣のメイ・カリヤン氏や、プノンペン港湾公社総裁のヘイ・バビー氏、CIMB銀行副頭取のブン・イン氏、カンボジア日本人会副会長の岡田光司氏らと意見交換を行い、カンボジアへの日系企業の投資環境調査などを行いました。

●JETRO(日本貿易振興機構)プノンペン事務所

JETROにて、カンボジアの経済、貿易、投資概況について説明を聴取しました。
カンボジアの経済成長率は2009年以降、年々上昇傾向にあり、2013年は7.0%と非常に高くなっています。また、2012年の貿易額は輸出入合わせて約120億ドル(日本は約151兆円)となり、日本の100分の1以下ではあるものの、年々上昇傾向にあり、毎年10~20億ドル単位で増え続けています。

これまでのカンボジア国内の経済特区への投資額累計では、世界の中でも日本が第1位で約3億ドルと群を抜いていますが、経済特区内外を合わせると、約100億ドルを投資してきた中国が圧倒的に高い状況です。
また、経済特区における税優遇措置は、法人税が一般企業で20%と低く、最大で9年間の優遇期間が設けられています。
国内の最低賃金法では月額100ドルと規定されており、他にも月額7ドルの居住・通勤手当などが義務化されています。アジア諸国の賃金が軒並み上昇傾向にあるとは言え、月額350ドル以上の中国やタイ、200ドル以上のインドネシアなどと比較しても、カンボジアの賃金がいかに低いかが分かります。
しかしながら、カンボジアにおいても、2013年5月に61ドルから80ドルに、今年2月には現在の100ドルへ引き上げられ、2018年までに160ドルまで上昇することが予測されるなど、賃金の上昇は止まらない可能性があります。

●プノンペン経済特区の住友電装(株)

カンボジア国内には8ヶ所の経済特区が整備されており、中でも、プノンペン経済特区は首都プノンペンから通勤可能な利便性の高い立地条件となっています。開発面積は(東京ドーム76個分)で、海外企業には50年リース方式で分譲されています。
現在、特区内には52社の企業が入居しており、うち日系企業は住友電装(株)の他にも味の素(株)、ヤマハ(株)、ミネベア(株)など52社が入居しており、時折、停電などが起こるものの、カンボジア唯一の国際規格レベルのインフラを完備しています。また、現場には2名の日本人が常駐し、様々なサポートも行っています。

訪問先の住友電装(株)は自動車のハーネス(配線接続部品)を製造する企業で、現地工場では850人の従業員が就業していますが、一年に約1割が離職してしまうそうです。従業員の多くは地方部から来る若者で、字が読めなかったり、色の区別ができない人も少なくないとのことで、数ヶ月にわたり教育を行い、その間も給与は支払われます。
また、経済特区内の他の企業との給与や福利厚生面での競争もあり、常に自社の優位性を保つ必要があるうえ、離職者を補うために、地方部へキャンペーンに毎年赴くとのことで、現地での労働者確保や労務管理の大変さをお聞きすることができました。

●プノンペン港

カンボジアの内陸水運ネットワークは、メコン川とその支流から構成されています。ただ、地形上、船体が100m超の大型船は航行できないこともあり、近年は陸路による輸送が増加しています。しかしながら、国内の地方部への生活必需品の輸送は水運が主流で、今後も需要増加が予測されています。
1996年には日本の無償資金協力により、桟橋式の岸壁が整備され、現在もこの岸壁を使用して、プノンペン港に運ばれたコンテナを小型船に乗せ換え、ベトナムのホーチミン港までの航路が利用されています。
今後、プノンペン港に日本の資本を活用して、生活必需品の加工工場などが建設されれば、生活様式が改善されつつある地方部の需要は、さらに向上する可能性があります。

●イオンモール・プノンペン

今年6月にオープンを控えたカンボジア第1号店となるイオンモール・プノンペンの工事現場を視察しました。
建物は地上5階建て、述べ床面積は約10万8千㎡の大型店舗で、総工費は約200億円にも上ります。周辺は中高所得層の大半を占める地域で、ホテルやオフィスも点在し、今後さらなる発展が望める地域に立地しています。
入居する店舗はカンボジア国内初出店のテナントが100店舗以上あり、プノンペン市内のローカルブランドが約40店舗、日本からの出店も約50店舗を予定しています。

●今後のカンボジアと大阪府の連携

カンボジアは、まだまだ発展途上にある国ですが、今後、ASEANの経済統合などが実現すれば、東南アジア全体の発展が見込まれ、急速な人口増加とともに、日本企業の新たな市場開拓の可能性が広がります。
そして、カンボジア政府の規模を考えれば、国よりも“小回りの利く”地方自治体との連携が有効的です。とりわけ中小企業の集積地でもある大阪府内の企業にも、大きなビジネスチャンスがあると言えますが、雇用条件や労務管理面などにおいては、まだまだ「リスク」が伴うことも事実です。

今後は、今回訪問した政府関係者をはじめカンボジアに精通する方々を招き、「チャンス」と「リスク」の両面をアナウンスメントする府内中小企業向けの「ビジネスセミナー」の開催を実施する予定です。そして、そうした機会を通じて、カンボジアと大阪府の「架け橋」となり、ともにメリットを共有できる関係作りに取り組んでまいります。

▲プノンペン市内の街並み

▲プノンペン市内の街並み

▲政策担当大臣のメイ・カリヤン氏と

▲政策担当大臣のメイ・カリヤン氏と

▲住友電装(株)の工場内

▲住友電装(株)の工場内

▲住友電装(株)による従業員教育の様子

▲住友電装(株)による従業員教育の様子

▲プノンペン港

▲プノンペン港

▲「くっくま孤児院」の子どもたち

▲「くっくま孤児院」の子どもたち